第107回 鳥や犬の心も聞こえる
また鳥や動物の声を聞くことができれば楽しいだろう。鳥や動物ならば、かなり楽に、思いを聞くことができるだろう。
自分のペットについては、声を聞くことができる。犬を飼っている人は、みんな、このような思いはわかるだろう。
泣き方で彼が何をねだっているのかよくわかる。甘えているのか、怒っているのか、何をねだっているのか……。
声を出さない動物だって、一緒にいれば言葉はわかる。テレパシーで通じるのだ。以前、イグアナを飼っていた時、イグアナは何もものをいわないのだが、私に心で語りかけてくる術を知っていた。
春から秋にかけて午前中は大きな籠を作って外に出し、日光浴をさせた。太陽光線が自分の体に吸収されると、イグアナはうれしそうに体を柔らくさせ、のけぞるような姿をした。しばらくして体が十分に温まると糞をしたいというのである。
家に入れて籠から出すと、おきまりの場所に糞をしに行き、用事が済めば、いつも自分のいる机に走った。そして1日中、網戸越に外を見て考えているのである。まるで思索する哲学者のようだった。たまに噴霧器で水をかけてあげると、目を細めて嬉しそうな顔をした。
コオロギをとってきてあげると嬉しそうに食べていた。このイグアナの気持ちは、瞳が完全に物語り、何をしてほしいのかと心の声で伝えてきた。
イグアナを大切に飼っていたのだが、途中でチワワがやってきた。どうしても私の愛情はチワワに移ってしまった。するとイグアナはものを食べなくなり、日々、やせ衰えて、ついには植物が枯れるようになくなってしまったのだ。最後は、卵をおなかにつまらせて死んでしまった。
そのときの、イグアナの悲痛な声も聞いた。しかしどうしてもものを食べないのだ。だんだん言葉が聞こえなくなってしまった。イグアナに必要なのは、愛だと思った。愛をもって、聞こうと努力をしなければ、何も聞こえない。このときはイグアナに拒絶された気がした。それは寂しいことだった。
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