第103回 聞き方がうまくなれば自然の声も聞ける
聴き方がうまくなると自然の声も聴けるようになる。青木由有子さんという歌手がいらっしゃる。彼女もおじいさまであられ、宮沢賢治の研究家でもあって、詩人でもある山波言太郎さん取材を通じて知り合いになった。
この方は自然の音を聞いて音楽を作詞したり作曲したりされるし、ご自分でもリラヴォイスという自然の音を使った発声方法で歌を歌う。
以前一緒に森の中に行き、歌うのを聞いたことがある。すると、どうだろう。大きな大木はうれしそうに風にそよぎ、チョウチョや蜂などの昆虫がどんどん集まってきた。
その日は暑い夏の日だった。歌を歌っている空間は、非常に心地よく、本当に自然のプレゼントのような歌声だと思ったことがある。
その青木さんだが、子供の頃、引きこもりのような状態になってしまったことがあるという。そのときは学校に行くのがいやで家に閉じこもっていた。庭の木々を見て、自分は蟻や蜂のような存在ではないかと思ったりしていたという。
そのようなとき、自然の音楽が聞こえてきたというのだ。
自然の声は美しい。早朝、太陽があがる時の歓喜の声、夕方風が吹くときの祝福に満ちたささやき、夜の森の濃厚なため息など、どれもこれもドラマチックだ。
友人の数人は植物と話ができるという人もいる。どのような声なのかと聞いたら、心の中に訴えてくるので、人間のような声をもっていないといった。
またある家相の研究家に聞いた話では、別荘を建てるために、植物が生い茂っている別荘地などに行くと、木がざわめき、悲鳴をあげて警告しているのが聞こえるという。そのような場合は、樹木にお詫びをし、いい聞かせてから、伐採をするという。
植物大好き人間の友人がいる。彼女の家も植物がいっぱい。植物の心がわかるような優しさをもっている。
あるとき、彼女と話をしていたら、ある樹木の話になった。ある公園に大きな樹木があったが、公園を拡張するかなにかで、その樹木を伐採する計画が持ち上がったという。もちろん彼女たちは、それに対して反対した。しかし、容赦なく、木は伐採され、その場に放置されていた。
彼女はその樹木の傍らを通るたびに、「ごめんなさいね」と謝り、樹木と会話をしてきた。すると、どうだろう。しばらくたってから、気がついたら、樹木から新芽が出ているというのだ。
最初は伐採され、あわれにも、道路に横たわり、さぞや人間を恨んだかも知れない樹木が、彼女の言葉によって励まされ、生きる希望を得たようなのである。樹木にも心はある。そして聞く耳をもっている。
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