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第105回 蓮の音は聞こえるか?

 

 蓮の人形を作っている行田に済んでいる木暮照子さんのテーマになっているのが「蓮の音」。蓮は咲くときに音がするといわれてきた。実際に科学的に検証してみると、音というよりも、花がずれるような音だというが、照子さんは「蓮の音」のいわれに心ひかれて、テーマに作品を作り始めた。

 1998年に銀座の東京画廊で、「蓮の音」というタイトルで、個展をしたときのこと。たまたま隣でお坊さんたちが、茶の湯のお茶碗の展覧会をしていた。隣り合わせという奇縁で、次々にお坊さんがきてくれた。あるお坊さんに、「蓮の音ですか? 斥手の音ですね」といわれた。そして、片手をあげた。

 しかし、そうはいわれても照子さんはわからない。「教えてください」と乞うた。すると、そのお坊さんは、二つの手を合わせて、ぱんと音を立て、「音しますか?」と聞いた。「はい、確かにします」と」照子さん。

 次にお坊さんは、片手をあげて「音、しますか?」と聞かれた。これでは何の音もしない。「いいえ、しません」と照子さん。そのとき、お坊さんはにっこり笑って、「あなたは手が何本ありますか?」と聞く。あっけにとられて、「2本です」といったら、「両手ですね」といい、不思議な笑みを残して立ち去ったのである。

聞くチカラ 手 この禅問答のような奇妙な会話に照子さんが呆然としていると、しばらくしてまたお坊さんがやってきた。照子さんは、今、きたお坊さんのいったことを聞いてみた。すると、そのお坊さんは、にやっと笑って、「そういう解釈もありますね」といわれたのだ。

 そして以下のように教えてくれた。「あなたは、幸運にも二つ手がありますが、だれもが2つあるとは限りません。片手しかない人がお祈りするときの音を天は聞き届けるなりというのです。実際に音はしませんが、片手しかない人の音でも天は確かに聞き遂げたよというのです」というような話を伝えてくれた。

 それを聞いて照子さんははっとした。「そう、天は聞いてくださる。聞こえる音ではなく、聞いて、聞かせていただく音」

 照子さんが感動していると、お坊さんは、「あなたは、意識してかしないかわかりませんが、作品に大きなテーマをいただきましたね」といわれて立ち去ったという。

 
 
 

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