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第55回 助けてというと事態は深刻になる

 

 なんと! 
 川に落ちていたのだ。腰をひどく打ったが、どうにか水の中を、よろよろと立ち上がってみると、ふくらはぎくらいまで水が、勢いを増しながら流れていた。

 とにかくこの川から脱出しなくてはと思い、上を見上げると、両側が壁になっており、自分の両手をあげても、へりをつかむことができない。よじのぼれないのだ。

 困ったなと思いながら、まだ何が起きたのか自分でもはっきりとは理解できず、川の中を歩いていった。だんだん雨が激しくなる。両方の壁をみても、高すぎてとうてい、よじ登れない。

 たまに植物が岸から出ているので、それを頼りにつかんでよじ登ろうとするが、植物は無惨にもちぎれてしまって、また川に落ちる。落ちたときのショックで最初は痛みを感じなかった足が、どんどん痛くなり、しかもこのまま歩いても、岸にはよじのぼれないような気がしてきた。

 人が歩いている気配もない。「助けて!」と叫んだところで誰もきてはくれないだろう。どうしよう。初めて恐怖心がわいた。しかしここで恐怖心にかられたら、本当に死んでしまうのではないかと思った。

 なんだか007の映画みたいだと思いながら、声をあげて笑ってみた。笑えば、現実はよくなると思ったのだ。ここで「助けて!」と悲痛な声をあげたら最後、悲壮な現実になるかも知れない。笑えば現実が変えられると期待した。

 それでも数分間は、何の変化もなく水の中をじゃぶじゃぶ歩き回り、どうにかよじ登れないかと周辺を見回して、数10分くらいは経過しただろうか。壁にひとつのくぼみをみつけた。そこに足をかけて、どうにかよじ登った。自分でもびっくりするくらいの、運動神経だった。まさに神業としかいいようがない。
聞くチカラ びしょぬれ
 どうにか岸によじのぼった私は、ほっとした。雨足はさらに激しくなっていたが、川から脱出できたので、これで溺死ということはなくなる。しかし、今度は、道路と反対側の岸に出てしまったので、茨か何かが裸足の足につきささり、とても歩けるものではない。

 道路の反対側にいきたいが、そのためには川を渡らなくてはならない。橋がなかったらどうしようと思いつつも、茨の道を歩いていたら、うれしいことに、橋があった。
 その橋を一気に渡り、道路に出て、電灯の下にいって自分をみて驚いた。体中、びしょぬれで血だらけ、ヒルが腕についているし、裸足の足は、さらに血まみれだった。どうにかよろよろと歩いて、その日、泊まる予定のホテルにいったら、ホテルマンもびっくりしたものだ。



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