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第36回 耳に「ありがとう」と書いておくこと

 

 毎年夏になると怪談などをしてきゃーきゃー騒いでいたことがあるが、その中でも「耳なし芳一」の話は忘れられない。

 簡単にストーリーをお伝えすると、今の赤間神宮が、まだ阿弥陀寺と言われていた江戸時代の中ごろのこと。芳一という目の見えない僧がいた。彼は琵琶を弾くことがとても上手だった。

 ある夜のこと。芳一の枕もとに一人の侍が現れた。その侍は、芳一を大きな屋敷へ連れて行き、大勢の前で、琵琶で平家物語の弾き語りをするように命じた。芳一が琵琶を弾き終え、屋敷から帰ろうとすると、同じ侍が「これから6日間、毎晩屋敷に来て琵琶を弾いてくれ」と、命じた。

 次の日の夜も、また次の夜も、同じ侍が芳一を迎えに来た。毎晩夜中にいなくなる芳一の行動を不審に思った仲間が尾行してみると、芳一は平家の墓七盛塚の前で琵琶を弾いていたのだった。

 腰をぬかさんばかりに驚いた僧は、すぐに寺の和尚にこのことを伝えた。和尚は芳一が平家の亡霊に殺されてしまうと案じて、亡霊のサムライが迎えにきても一緒に行かないように、芳一の体中に経文を書いて、芳一の体を見えないようにした。

 その夜のこと。また、同じ侍がやってきた。しかし、芳一の姿が見当たらない。さんざん探したあげく見つからないのであきらめて引き上げようとしたその瞬間、闇の中に芳一の両耳だけが宙に浮いているのを見つけたのだった。侍は、これだけでも持って帰ろうと、その耳をちぎり取って立ち去った。
聞くチカラ 耳
 ここが怖い!きゃーという下りである。

 さて、しばらくして和尚が芳一の部屋へ入ってみると、両耳をちぎり取られ、苦しんでいる芳一がいた。和尚は芳一の耳にだけ、経文を書くのを忘れたので、耳だけをサムライに見つけられ、ちぎられたのという。

 これを聞いたとき、もし和尚が芳一の耳に「ありがとう」という言葉を書いたならば、芳一の耳はもっていかれなかったのではないかと思った。耳にこそ、私たちは最も大切なのことば、「ありがとう」や、相手をねぎらう「うれしい!」という言葉をたくさん書き付けておくことが大切だ。

 聞いた情報はひとつの栄養源、それを耳という器官を通じて自分の中にいれるためには、感謝のフィルターが大切なのである。




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