第19回 聞く用意ができれば、話してもらえる
次に聴き方のコツをお話したい。筆頭にあげられるのが、「聞く用意ができているかどうか」ということである。
あるとき、私は、誰かのそばに行くと、その人がいろいろなことを話しだし、1時間くらいはゆうに話した後で、「あら、私、どうして、こんな話をしてしまったのかしら? こんなこと、ふつうは言わないのに! 不思議ね。あなたを見ていたら、次から次へと教えてあげたくなっちゃって」といわれるようなことが続いた。
会う人、会う人が、このような状態で、貴重なことを教えてくれる。そして同じようにいうのだった。
そのとき、たぶん、私は、空っぽのコップの状態だったと思う。当時、いろいろと価値観が変わって、新しい価値観の中でどのように生きていけばいいのか模索していた状態だった。
今までの価値観をすべて捨て、全く空っぽの状態でいたのが、相手にも何となく感じられたのだろう。もしかしたら、何ももたないあわれな乞食(精神的に)のように見えて哀れんでくれたのかもしれない。
私は何ももっていなかったから、とにかくおもしろいように、人の話を吸収した。しかもそのときの私にとって、もっとも必要なことを……。私が聞いてもいないのに、私の渇望をくみ取ったように話してくれるのである。
そう考えると聞く準備ができているのはありがたいことである。とても大切なことである。聞く準備ができていさえすれば、質問などしなくても、耳を傾けるだけで、いやそこにいるだけで、相手は直感的にわかって、そこに水を注いでくれる。
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